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IGES-JISEの森つくり

人類の豊かな未来を創造する為に、水源涵養・水質浄化、防災などの機能を有する環境保全林をはじめ、グローバルには地球温暖化防止に寄与するエコロジカルな「ふるさとの木によるふるさとの森づくり」を積極的に推進します。

いのちの森つくり・IGES-JISEから世界へ

〜一村一森運動・100年の森を〜

公益財団法人 地球環境戦略研究機関 国際生態学センター 終身名誉センター長 宮脇 昭

いのち、文化、遺伝子をまもる「ふるさとの森つくり」

より豊か安全に、すべての人がそれぞれの地域で、文化的に満足できるくらしを未来に保証するためには、画一的な都市つくり、産業立地つくり、交通施設つくりなど、いわゆる箱物つくりだけでは不十分です。どれほど人間が刹那的な欲望を満たす人工環境を形成したとしても、実は我々も生物の一員であり、生態系の消費者の立場でしか、この地球上では生きていくことはできないのです。

すべての人々が、心身共に健全に、真に豊かに幸福に、未来志向で生き延びるためには、人間の命の共生者、生存の基盤、文化の母胎である~生きた緑の構築材料「ふるさとの森」~を国土計画や各地域のプロジェクトに取り込むことが大切です。

ふるさとの木による「ふるさとの森つくり」
~国際生態学センターからの提案~

「ふるさとの森つくり」は、水源涵養、水質浄化、防災・環境保全機能を最大限に高め、エコロジカルなメカニズムに基づく土地本来の森のすがたを回復させるための取り組みです。芝生などの単層群落は、防災環境保全機能が、森の30分の1であるだけでなく、定期的な芝刈りとともに、除草、農薬散布などの環境負荷や手間、管理費等が半永久的に必要です。また、木材生産のための針葉樹の単植も、場所と経済的に対応できれば、今後も続けていくことになるでしょう。

「ふるさとの森つくり」は、潜在自然植生*の主要な樹種群の根群の十分発達した幼苗を、自然の森のシステムに沿って混植・密植し、基本的には自然の管理にまかせて、時間と共に、より確実に多様な防災・環境保全機能の向上を目指します。

*潜在自然植生:ある土地からいっさいの人間の影響を取り除いたときに想定される、その土地がその時点で支え得る最も発達した植生のこと

外来牧草が植えられていた斜面(横浜国立大学正門通学路沿い1977年2月)
残土を運んでほっこりと被せ、潜在自然植生の主木、シイ、タブ、カシ類のポット苗を混植・密植(1978年6月)
3年目 3mほどに生長道路沿いに花木をマント群落として植えた(1981年5月)
現在の様子(2000年12月30日)

地域ではじめる未来指向の森つくり

いのちと遺伝子、それを支える清浄な大気と水資源をまもり、防災・環境保全機能を果たす、そして、人々にやすらぎを与える「いやしの森」を、どう増やすかに全力をつくすべき時です。今すぐ、どこでも誰でも取り組める、未来指向の「いのちの森つくり」を、行政・企業、私たち一人ひとりが、愛する人のため子どもたちの未来のために、足もとからはじめましょう。

小学生など1,200人1万5千本植栽 (奈良県かしわらバイパス、1977年3月)
15年目 12mの道路環境保全林に成長
地域ボランティアの皆さんと1,100人1,300本植栽(大分県日田市 2000.年4.月29日)

一村一森プロジェクトと緑のネットワーク

都市部のみならず農山村においても、土地本来のすがたの自然の森は、ほとんど見られないのが現状です。残された山地の森の保全、より土地本来の森への樹種転換・再生が望まれます。同時に、すべての人々が家から歩ける小公園や小さな空き地のまわりに、立体的な小樹林帯をつくります。幅は1mでも可能です。小樹林・緑道と共に各地に可能な範囲で大きめの森、土地本来の樹林で囲まれた空間をつくり、小さな並木や木立と緑の回廊でリンクさせて、立体的な緑のネッワークを構成します。

人々のいやしの森、こどもや高齢者の憩いの場や散策・運動の場になるとともに、危険度の高い地震や大火の際には、確実な防災・避難場所(防災環境保全林)になります。 世界に誇る21世紀の鎮守の森を今すぐ足元からつくっていきましょう。

小公園は一時の逃げ場所。一列の常緑カシ林が大火を防止 (阪神淡路大震災)
幅1mの樹林帯 (横浜国立大学事務局前通り)

IGES-JISEから世界への発信

IGES国際生態学センターが提案する「ふるさとの木によるふるさとの森」は、世界に誇る伝統的な鎮守の森と生命集団と環境の総合科学;エコロジーの知見を総合した21世紀の森です。日本の伝統的な集落・町づくりでは、自然を開発・破壊した場合には必ず土地本来の森を残し、つくり、守ってきました。経済からヒトの価値観まで激変している現在、どんな時代にも不変な「いのちの森」、1000年先まで残る「ふるさとの木によるふるさとの森」を、今すぐ市民が主役となってつくっていく時です。IGES国際生態学センターは、そのノウハウと成果を、神奈川から世界に発信します。

ふるさとの森も創り、守ってきた日本人の英知、次のミレニアムまでも残るChinjuno-mori(after miyawaki 1988)
日本の各地に残されている小樹林
青島市高速道路沿いの植樹祭。市長(右)以下2,000人が共に汗して2万本を植栽
東電扇島火力発電所周辺防災環境保全林形成エコロジカル植栽の直後(1985年)
10年目 8mの樹林帯へ。 最高の技術は最良の緑の環境とのみ共生する(パウル ミュラー)

防災環境保全林の形成事例

防災環境保全林は、「ふるさとの森つくり」の方法に沿って行われる代表事例のひとつです。防災環境保全林をつくるためには、それぞれの地域の土地本来の「ふるさとの森」を知るための事前現地調査は欠かせません。現場では、十分な生態学的な現地植生調査を行い、その成果に基き、それぞれの場所に応じた植栽樹種群を決めていきます。

たとえば、横浜の場合には、海岸沿いはタブノキ、斜面はスダジイ、そして内陸部はシラカシ、アラカシ、ウラジロガシ、アカガシを主としたカシ類などが候補となり、冬も新鮮な緑で一年を通じて防災・環境保全機能を果たすシイ、タブ、カシ類が森の主役となります。地域により樹種の組み合わせは微妙に異なります。重要なことは、それぞれの土地の潜在自然植生の主役とそれを支える3役、5役の樹種群を取り違えないことです。

久里浜高校裏の防災環境保全林 左から順に、施工時、植栽時、2年目、3年目、10年目の様子

根群の充満したポット苗を混植・密植する

主木に選ばれた樹種は、深根性・直根性で、台風、地震などにも倒れませんが、背丈の大きくなった成木を移植するとなると、技術的にも難しく、コストもかさみます。したがって、「ふるさとの森つくり」では、それぞれの地域の土地本来の森の主役の樹種群を中心に、できるだけ多くの構成種の種子から、高さ30cmくらいの根群が充満したポット苗をつくり、自然の森のシステムに従って、できるだけ混植・密植します。一冬越せば、1年で1m、4年で3m、8年で6m、12年で10mと生長し、多様な自然環境に応じた多彩な機能を果たす多層群落の自然の森に限りなく近い防災環境保全林が形成されます。

森つくりの効果

ふるさとの森つくりは、世界的に深刻な問題になっている地球温暖化防止にも大きく貢献します。樹林は生長とともにCO2を吸収、C6H12O6などの炭水化物、リグニンに取り込み固定します。緑の表面積が芝生の30倍ある土地本来の立体的なふるさとの森は、これらの機能も草本植物や芝生の30倍以上あり、しかも持続的です。

2年目 岩盤を抱いた根群の生育状況。地下部2m

森つくりの実績

これまでIGES-JISEでは、国内では「ふるさとの森づくり」を900ヶ所、海外では東南アジア、アマゾン、チリ、中国の万里の長城、現在上海市が進めている上海哺東新開発地区、青島の高速道路沿い、寧波、徐州、馬鞍山市などの製鉄所のまわりや都市林づくりなど300ヶ所で取り組みました。すべて行政や企業がプロデューサー、市民が主役の森づくりです。

上海市哺東、新都市開発地の第一回植樹祭。主要樹種は姉妹都市横浜とほぼ同じ常緑広葉樹のシイ、タブ、カシ類(中国・上海)
中・日の小中学生も含めて1,200人で1時間に15,000本植樹祭。敷わらも完了(中国・上海)
1人が10本以上植えて充実感に満ちて嬉しそうな中、日の小中学生(中国・上海)
同、日本各地と同様に95%の活着率で2年で2m(2002年4月12日、中国・上海)
マレーシア、ビンツルの焼畑跡放棄地での植樹祭(1991年7月)
同左、10年12m以上に生長した木々(マレーシア、ビンツル 2001年8月)
ブラジル―アマゾンでの植樹祭。いずれも5年で6m以上に生長
生長した木々(ブラジル、ベレン)10年で13~14mに生長

IGES-JISE森つくり宣言

IGES国際生態学センターは「ふるさとの森つくり」の理論的、科学・技術的支援を行い、健全で豊かな地球環境の持続・向上に向けた自然回復・再生に努めます。すべての地球市民が主役となり、共に大地に手を触れ、額に汗して、足もとから地道であっても、間違いのない最も確実で長持ちする本物のいのちの森づくり「ふるさとの森つくり」のドラマを地球規模で展開し、その成果を1歩1歩、着実にIGES-JISEから地域、そして、世界へと普及・発展させることを宣言します。