熱帯林再生に関する調査・実験研究

マレーシア・サラワク州、ブラジル・パラ州において、熱帯林の生育環境等の調査を継続し、これまでに蓄積された試験研究データの分析を行う。さらに、再生技術の確立・普及のために熱帯林再生の実験プロジェクトを推進する。

マレーシア熱帯林再生に関する調査・実験研究プロジェクト

目黒 伸一 (主幹研究員)

オイルパーム整地
苗圃
オイルパーム整地
苗圃
オイルパーム整地

研究の目的

世界的な環境問題や生物多様性の観点から熱帯雨林の重要性が指摘され、保全、修復が急務の課題とされているのは周知のとおりである。

世界の熱帯雨林は主にアフリカ、中南米、東南アジアに分布する。その中でも日本がこれまでに最も恩恵に浴し、関係が深かったのは東南アジアの熱帯雨林である。森林から伐採される木材は過去数十年間にわたり、他国と比較して大量に日本に輸入されてきた。その他のバナナ、パイナップルなどの果物やゴム、ヤシ油、胡椒などの農作物も森林伐採跡地に換金作物として栽培され、大規模な開発が進められている。その速度は年を追うごとに増し、日本のみならず経済、環境の面で世界中と結びつくようになっている。一方、動植物の宝庫である熱帯雨林の実体は近年の精力的な研究にも拘わらず、不明な事柄が山積している。樹種特性ひとつをとっても、数多くの熱帯雨林に出現する樹木のうちのほんの一握りについて、実証データがあるに過ぎない。

本プロジェクトでは、失われつつある東南アジア熱帯雨林の回復、創造を目指し、本来あるべき自然性の高い森林を再生させることを目的としている。植栽地近くから種子を採取、発芽させ、日照、土壌などの植栽条件の相違による植栽後の生育挙動を追跡調査、解析することで樹種の生態的特性が解明され、出現すべき立地が予想される。

また、このような理解のためには土地本来の自然林(潜在自然樹種)と現存植生の時系列、空間系列の配置を把握することが不可欠であり、様々な路傍雑草群落、二次林、自然林などの植生調査を行っている。

研究内容

上記のように本プロジェクトの内容は

  1. 樹木の生長挙動の把握
  2. 植生調査資料の収集、解析

に大別される。本プロジェクトは三菱商事株式会社の資金協力を得て、マレーシア農科大学(UPM; Universiti Putra Malaysia) とマレーシア・サラワク大学(UNIMAS; Universiti Malaysia Sarawak)との共同プロジェクトとして、1991年横浜国立大学環境科学研究センター植生学研究室(宮脇研)で始まり、1994年に財団法人国際生態学センターに引き継がれれ、UPMビンツル分校内の800ha敷地で進められている。

植栽樹種はフタバガキ科の樹木が多く植えられているほか、植栽地周辺の自然性の高い低地熱帯雨林に出現する種が植栽され、1999年10月現在その総計は92種20科30万本にのぼる。植栽条件は植栽密度、日照や土壌水分、土壌養分など植栽立地の異なるプロットを設定し、植栽当初から20箇所を越える永久方形区を設置して樹種の生長を追跡調査している。現在までに植栽条件の違いによる樹種特性、樹種の物性と生長傾向やいわゆる環境保全林の日本で形成されたものとの比較などが解析され、学会、論文等で発表、出版されている。

一方、植生調査は植物社会学的方法を用い、各種の草本群落、二次林、自然林に近い状態の森林などの群落について行っている。自然性の高い森林を調査することが森林再生のために不可欠であるが、遷移系列や樹種特性、立地の判断材料として、代償植生の各群落を調査することも重要である。
これまでの調査結果から実際に、ある特有な局地環境に出現する幾つかの樹種が判別された。それらのうち、本プロジェクトで植栽されている数種の生長特性と群落内での出現挙動が良く一致するものがみつかっており、植生調査が種のもつ生態的特性を認識するのに有効であることが、改めて示されている。

今後の計画

樹種による物質分配特性、展葉、開花、結実の量的解析や生育プロセスとその個生態は、植栽後10年弱経過し、初期生長期を終わろうとしている現在の新たな研究項目になる。また、まだ生長解析できるほど植栽後の時間が経過していない植栽地や未着手の永久方形区に植えられた樹種の生長解析も今後進めたい。また、これまでの調査結果から得られた知見をもとに、より明確な目的をもった植栽実験が求められる。

これまでにボルネオ島サラワク州、サバ州で植生調査を行ってきたが、森林群落の種類に比較して、まだ調査が充分ではない。現地植生調査、生育実験を、今後も精力的に行っていかなくてはならない。また、樹種の地理的分布に起因する植生タイプを把握するために、水平方向、垂直方向への植生調査範囲を広げることが必要である。

研究を継続すればするほど情報が蓄積され、多面的に理解することが可能となってくる。地道な現地調査を主に研究を進めていきたい。

発表論文

これまでに公表された論文は以下のとおりである。

Miyawaki, A.,1999. Creative Ecology:Restoration of Native Forests by Native Trees, Plant Biotechnology,16(1):15-25
Miyawaki, A.,1993 Restoration of native forests from Japan to Malaysia, Restoration of Tropical Forest ecosystems; 5-24
Miyawaki, A.,1998 Restoration of urban green enviornments based on the theoris of vegatation ecology, Ecological Engineering 157-165
宮脇 昭1997 緑の地球環境再生を目指して 学術月報、430-441
Murakami, Y. & Meguro, S.,1996. Woody vegetation in Bintulu and Similajau National Park, Malaysia Eco-habitat. 3. 1-17.
Meguro, S. & Miyawaki, A.,1997. A study of initial growth behavior of planted Dipterocarpaceae trees for restoration of tropical rain forest in Borneo/Malaysia. Tropical Ecology. 38:237-245.
Meguro, S.1998. Growth behavior of some species through experimental reforestation on Borneo IslandⅠ. Eco-habitat. 5. 53-58.
Alias, M. A, Hamzah, M. Z.,
Fujiwara, K., & Meguro ,S.,
1998. Rehabilitation of tropical rainforests based on potential vegetation species for degraded area in Sarawak, Malaysia. Tropics. 7 (3/4): 223-239.
Meguro, S. & Miyawaki, A.Species characters and the growth behavior at reforestation of tropical rain forest in SouthContribuciones al conocimientoy evaluation de la vegetation. (in press)
Miyawaki, A. & Meguro, S.Restoration of tropical rain forests in Sarawak, Malaysia. IAVS proceeding (in press)